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  • 『十三機兵防衛圏』――デカルトの悪魔を瓶詰めにして、面白いものをたくさん詰め込んだ作品
    日本語訳/ゲームコンテンツ 2025. 3. 30. 23:32

    本記事には作品の重大なネタバレが含まれています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

    https://www.youtube.com/watch?v=K4rCzA8fS84&t=18s&ab_channel=LEMMiNO

     現代哲学の巨匠であるアメリカのヒラリー・パトナム教授は、座標平面を考案したことで有名なルネ・デカルトの「デカルトの悪魔」と似た理論を提唱しました。それが今回取り上げる「脳の中の缶詰(ブレイン・イン・ア・ヴァット)」です。

    今、皆さんが呼吸をしながら家族や友人、同僚と話したり、パソコンやスマートフォンの電源を入れて使ったり、お腹が空いたからご飯を食べたり——これらすべてがシミュレーションに過ぎないかもしれない、という理論です。実際のあなたはどこかの研究所に置かれた栄養液に浸された脳だけの存在であり、そこに接続された装置が、あなたの脳内に仮想現実を流し込んでいて、それが現在体験している世界だというのです。

     

    大体こんな感じ

     

     デカルトの悪魔も、ほぼ同様の発想です。人間は氷に触れれば冷たく感じ、火に近づけば熱いと感じ、それらが現実で当然の感覚だと思い込んでいます。しかし夢の中では、冷たい炎や熱い氷のような矛盾した感覚を体験することもあります。もし、感覚を操作する力を持った悪魔が人間を操っているとしたら? その時、人間が感じているすべての感覚は、本当に信じるに足るのでしょうか?

    もしも骨も血も神経も筋肉も皮膚もすべて虚構であるなら、何が残るのか? それは「思考している私」という存在のみです。何もかもが嘘であったとしても、自分が自分の存在を否定することはできず、「考えている」という行為自体が真実である——だからこそ、あの有名な言葉「我思う、ゆえに我あり」が生まれたのです。

     

    デカルトはコンピューターもない時代に、感覚遮断ジャンルを創始したのか?!(違います)

     

      もちろんデカルトの時代にはコンピューターはありませんでした。だからこそ、その論理をより具体的かつ明確に説明できる理論が、この「水槽の脳」理論なのです。パトナム教授はさらに「我々が水槽の脳であることを認識できるのか?」という問いに対して、「それさえも水槽の脳を管理する者が、『あ!自分たちは水槽の脳かもしれない!』と思わせる電気信号を送っているだけかもしれない。その疑問自体が意図されたものであり、真実を知る方法は一切ない」と語りました。そのため、この理論は多くの創作物や演出の素材として使用されています。代表作として映画『マトリックス』シリーズが挙げられ、ジェイク・ギレンホール主演の『ミッション:8ミニッツ』、『ポプテピピック』1期1話もこの理論を基にしたギャグを描きました。

     

    声優による存在論を見せたアニメ

     

     そして、多くの創作物の中でも今回紹介するゲーム、アトラスとヴァニラウェアが制作した【十三機兵防衛圏】は、『マトリックス』以降、このテーマを究極まで活用した傑作だと言いたいです。正直、この作品のストーリーテリング技法について個人的に研究したいほど凄まじい作品でした。広大に展開する設定とミステリーが最後に怒涛のように押し寄せ、その結末として「水槽の脳」の理論へと辿り着く本作は、本当に良い意味で衝撃的で後遺症が残るほどです。

     

    人生最高傑作ゲームTOP3入り間違いなし。

     

     さらに、この作品は巨大ロボットである機兵に乗って戦うSFジャンルのため、SFファンなら見つける楽しみが豊富なパロディとオマージュが多数含まれています。『ターミネーター』、『デューン』、『マトリックス』、『メン・イン・ブラック』、『劇場版マクロス 愛・おぼえていますか』、『ゴジラ』、『エヴァンゲリオン』、『コードギアス』、『A.I.』、『アイランド』、『エイリアン』、『スーパーロボット大戦』、『メタルギアソリッド』、『攻殻機動隊』、『AKIRA』など、名作SFのほとんどがこの作品に高確率でパロディかオマージュとして組み込まれています。しかもそれらが無理なく整合性を保ちながら自然に絡み合っています。

     

    戦闘システムはちょっと好みが分かれるかも。

     

     しかしこのゲームが特異なのは、単なる運命論ではなく、主人公たちの「自由意志」をある程度尊重しているところです。物語自体が「教育シミュレーション」として機能しており、『ミッション:8ミニッツ』のように、最高の結果を得るため繰り返し再起動を行います。ただし、このゲームでは過去の経験や記憶まで継承しているため、整合性が取れています。

     

    開発会社の趣味が詰まった食事シーン。このゲームのおかげで焼きそばパンを大量に食べました。

     「水槽の脳」理論が真実かどうか、私たちは永遠に知ることができません。それでも、創作として非常に魅力的なテーマであることは間違いありません。

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