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  • [SANABI] - テセウスの感動的な船 -
    日本語訳/ゲームコンテンツ 2024. 10. 7. 23:13

    ※このポストの特性上、作品のネタバレが含まれています。特に、ゲーム『SANABI』の結末に関するネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は後でお読みいただくか、注意してお読みください。

     

    https://youtu.be/dYAoiLhOuao?si=t8Ez8PJF2m_wTXDr

     

     古代ギリシャの歴史家プルタルコスは、次のように語ったとされています。

    「上半身が雄牛、下半身が人間という恐ろしい怪物ミノタウロスを倒した英雄テセウスがアテネに帰還した。アテネの人々は、英雄の偉大な業績とその感動を永遠に語り継ぐために、テセウスが航海したその船を展示することにした。しかし、年月が経つにつれて、いくら船をよく手入れしても、腐りかけた板や風で裂けた帆のせいで、もはやその船がテセウスの船だとは思えないほど古びていった。そこで、一つ一つを修理し始めた。腐って壊れた板は同じサイズ、同じ木材で、帆も同じ素材で張り替えた。すると、ああ! テセウスが自ら触れ、その上に立っていた船の元の材料は、一つも残らなくなった。しかし、その形だけはテセウスが乗っていたときのまま残っている。さあ、皆さんに質問です。このテセウスの船は、今でもテセウスの船といえるでしょうか?」

     

    特に機械やロボットにこのテーマがよく使われることがあります。

     

     さて、皆さんがどんな作品を見ても役立つかもしれない、あるいはすでに知っているかもしれないその有名な「テセウスの船」の話です。このテーマが扱われる作品だけでも、『攻殻機動隊シリーズ』、『クレヨンしんちゃん劇場版 - ロボとーちゃんの逆襲 -』、『エヴァンゲリオンTVA&新劇場版シリーズ』、『6デイズ』、『バイセンテニアル・マン』、『アップルシード』、『アイランド』、『ニーア:レプリカント&ニーア:オートマタ』、『ロックマンゼロ3』、『空の境界』、『メタルギアソリッド5 - ファントムペイン -』など、ジャンルを超えて数々の作品に登場しています。日常の中でも例として見られることがあります。例えば、韓国の「南大門」はその一例です。南大門は2008年、非常に残念な事件によって全焼しました。しかし、幸いにも再建され、現在はその姿を取り戻していますが…これは果たして、朝鮮時代の南大門といえるでしょうか?朝鮮時代に使われた木材、塗料、その他の材料は一切使用されておらず、焼ける前の姿とも微妙に違っています。さらに敏感な話題ですが、復元作業中にも多くの議論があったといわれます。だから、やや過激に表現すると、これは「南大門の実物大レプリカ」ともいえるかもしれません。当時もこの「本物の南大門かどうか」をめぐって激しい議論が交わされました。最終的には「法的に南大門だ」という結論が出されましたが。この「テセウスの船」の話は一言では片付けられません。簡単な方法もありますが、先述の南大門の例のように、法的に「これはこれだ」と認めればいいのですが、法律と関係のない状況で考えると、これを認めるかどうかの論理と判断はまさに「自由」です。

     

    普通は「君は君、私は私」というエンディングが主流です。

     

     そのため、「テセウスの船」の論理は、まさに答えが出せない議題であり、すべての結論が正解となるため、多くの創作媒体で定番のテーマとして使われています。そこに、さまざまなバリエーションが加えられることもあります。例えば、身体はそのままで精神が変わる、精神は自分だが身体が変わる、身体はほぼ再構築されるが人格はそのまま、または人格に何かが注入されて徐々に変わっていくなど、船の材料を変えるか、船長を変えるかというバリエーションがあるのです。

     

    https://youtu.be/3A_96Ox6Z5I?si=KRfnhoSr8ZSGhTcq

     

     

     そんな中、最近このテーマを取り上げ、多くの人々の涙を誘ったゲームが話題になりました。それが『SANABI』です。ドット絵のレトロ感が魅力的なインディーゲームで、ゲームのクオリティも保証されていますが、何よりもストーリーのビルドアップを通じて、最後のどんでん返しで勝負する作品です。もちろん、テセウスの船のテーマを用いていることから、ストーリーのどんでん返しが「未曾有のものだ!」とは言いませんが、開発者が入念に作り上げたビルドアップが感情を一気に爆発させる非常に堅実な手法を取っています。例えるなら、映画『リメンバー・ミー』のように、「お決まりの感動話だね〜wwwでも涙が…」という感じでしょうか。

     

    初めから涙を誘うビルドアップ

     

     まず、このゲームのビルドアップは、最初からプレイヤーを騙すところにあります。未来の架空の朝鮮を舞台に、進化した技術が溢れる世界で、退役軍人である父親がテロリストの一味と思われる「SANABI」によって娘を失い、その正体を探り、復讐を果たそうとするプロローグで進行します。どこか『ジョン・ウィック』第1作のような展開です。

     

    『バタフライ効果』が起こるそのすべての始まり

     

     物語が進む中で、当然ながら意味深な伏線やキャラクターが次々と登場します。まず、主人公である天才少女の金マリや、彼がかつて勤務していた軍隊の後輩たちが登場します。彼女と退役軍人のダブル主人公的な関係性は、どことなく映画『アジョシ』や『レオン』を思わせます。プロローグで提示された情報に従ってプレイヤーは物語を進めていきますが、「なぜこのキャラクターがこんな言葉を使うのだろう?」と思わせる伏線が随所にちりばめられています。それは、まるでロッテワールドの「シンドバッドの冒険」のように、細かいところまで観察する余地を与えてくれます。

     そして、ついに物語は最終章へ突入します。実は、主人公の娘は生きており、彼女こそがこれまで守ってきた天才少女、金マリだったのです。ここまでは「まあ、予想通りだな」と思うかもしれませんが、実は主人公はすでに亡くなっており、彼の人格が戦闘ロボットに移植されていたのです! ロボット自身が「自分はまだ生きている」と思い込み、彼はずっと「金将軍」として行動していたのです。

     

    ???:「あ…人間時代の終わりだ…」

     

     そのため、なぜ彼の軍部隊の後輩たちが彼を「缶詰」として扱っていたのか、そして時間が経つにつれて周囲のキャラクターたちがなぜ彼を少しずつ理解していったのかが明らかになります。そして、感動のクライマックスで金マリが彼を抱きしめ、号泣するシーンが繰り広げられます。このシーンが感動的ではないと感じる方もいるかもしれませんが、このゲームは「テセウスの船」というテーマを巧みに使い、学ぶべき点が多いと感じました。

     

    辛ラーメンが全然辛くなかったという場面です。はい。

     

     現代において、ストーリーテリングは、実験的なものを除けば、まるで数学のように公式化されてしまっています。だからこそ、どれだけ効果的にプレイヤーを驚かせるか、あるいは正攻法で感動を与えるかが重要になってきます。観客やプレイヤーは、すでに予想可能な展開や結末に対して、「いかに驚かせるか」、または「どれだけ現実味のあるディテールで感動させるか」が鍵となる時代です。

     その点、『SANABI』は、力強い展開でプレイヤーの心を揺さぶります。明らかに予想できるプロットでありながら、それを正確に狙い、かつ強力なビルドアップによって感動を爆発させます。まるで、後ろから不意打ちを狙っていた相手の後頭部を、相手の防御を超えて力強く打ち破るかのような作品です。このゲームには、確実に「テセウスの船」のテーマと、無謀とも言える強力なストーリーのビルドアップが融合した作品の香りが漂っています。映画『リメンバー・ミー』もこの点では非常に似た側面を持っています。

     

    キャラクターのデザインは上を参考したのでは?!

     

     ところで、金マリを見ていると、まるで高級な時計のキャラクター「ソン・ハナ」を思い出させるのは私だけでしょうか?

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