※本記事には作品のネタバレが含まれています。未プレイの方やネタバレを避けたい方はご注意ください。
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ゲームを遊んでいるうちに、気付けばこちらの体まで冷えてくる——そんな印象的な前作『フロストパンク』の続編、『フロストパンク2』がついに登場しました!
ゲームシステムの刷新はもちろん、設定の変化や前作からつながるストーリー展開などにより、「前作を超えることができるのか?」と大きな注目を集めている期待作です。

前作では、まさに『スノーピアサー』を彷彿とさせる氷のディストピア世界で、生存者たちをどうにか率いて「持続可能な環境」を築けるかどうか、そして極限状態に追い込まれながらも“人間讃歌”を貫けるのか、それとも楽で確実な手段を選ぶのか……プレイヤーの選択を次々と試してくる構成が大きな評価を得ました。
生き残るためには命をかけて資源を採掘し、食料を確保し、未踏の地を探検しなければなりません。ただし、生存者たちに犠牲を強いるばかりだったり、資源確保を無計画に優先したりすると、あっという間にプレイヤーは信頼を失って追放され、ゲームオーバーになってしまうのです。
遠くから迫る大嵐への備えに忙殺される中で、生存者たちはあれこれ要求してきて、「アレしろ」「コレしろ」「柿食え」「梨食え」状態で、もはや妨害にしか思えません。

そうして切羽詰まった状況の中、まず最初に放棄しがちなのが「福祉」です。深夜までの労働を強いたり、配給量を減らしたり、あるいは食料に“妙なもの”を混ぜて量を水増しするような選択肢も出てきます。そしてその結果、大勢がバタバタと倒れ、労働力が激減し、福祉の大切さを身に沁みて理解することになります。

さらに、全滅の危機すらある超巨大な吹雪の前では、生存者たちの間に分裂が起き、希望も秩序も崩壊します。プレイヤーは、宗教的な強制力によって住民を導くか、あるいは独裁者となって軍を組織し、抑圧によって吹雪を乗り越えるかという選択を迫られます。しかしそのどちらを選んでも、もはや“人間讃歌”は失われ、ただ吹雪を生き延びるための“何か”になってしまいます。

このように、前作は人類史初期の部族社会を彷彿とさせる、経営シミュレーションの体験を提供してくれました。原始的な国家モデルを元に、資源と領土と民を確保し、賢明かつカリスマ性のある指導者の判断によって、持続可能な生存を目指していくのです。

ところが今作では、プロモーション映像でも予告されていたように、前作で生存に必要不可欠だった資源が「石炭」だったのに対し、今回は「石油」が発見され、運用できるようになります。石炭よりも遥かに効率的で、石油を使って生活物資を製造することも可能です。さらに前作では数百人規模の管理だったのに対し、今回は最初から千人単位、後半になると守るべき市民数は一万人を軽く超えてきます(驚異的な出生率)。前作では家を一軒ずつ建てていましたが、今作では一度に“区画”を建設しなければなりません。つまり、町や村の単位で都市設計をしていく必要があるのです。
そしてもはや「独裁」は通用しなくなり、前作でその兆しが見えていた“派閥”が拡大し、一種の国会政党のように進化しました。そうして、生存者たちの都市は「委員会(議会に似た機能)」を形成し、ディストピア的な“民主政治”を進めていくのです。

前作がいわば「部族国家の生存記録」だったとするならば、今作はまるで古代ギリシャのような、ある種の都市国家に近い成熟した姿が描かれています。ただ資源の融通が効くだけでなく、政治制度そのものが高度化しているのです。前作では法案ボタンを一つクリックすればすぐに発効されましたが、今回はどの法案も各派閥、つまり“政党”の過半数の賛成を得なければ可決できません。
例えば、Aという法案をA派閥が推進しようとしても、B派閥がそれに反対する理由がある場合(自分たちの理念や利益に反するなど)、法案がブロックされてしまいます。ここで無理やり法案を通そうとすると、その派閥との関係が悪化し、ついにはプレイヤーに反旗を翻すこともあるのです。最終的には、内乱が起きたり、プレイヤーが排除されてゲームオーバーになる展開も見られます。

物語が進むと、遠方に新たな土地が発見され、そこを開拓することで植民地のように発展させることが可能になります。ただし、その開発を巡っても派閥間の対立が生まれ、強制的な手段に反発して内乱が発生することがあります。そうなれば、プレイヤーは警備隊を組織して騒動の鎮圧にあたらなければなりません。逮捕や追放、処刑など、選択肢は過酷です。さらに、事態が悪化した場合、法案によって独裁的な体制を築き上げ、誰の反対も受けずに政策を実行できるようになるルートも存在します。それはまるで古代ギリシャからローマ帝国へ移行するような姿であり、石油を軸に国家が回るという点では、ソビエト連邦のような体制を想起させます。

今作はまるで、プレイヤーに対して常に天秤を持たせているかのようなゲームです。その天秤が片方に大きく傾けば、バランスは崩れ、全体が壊れてしまうような、非常に繊細な構造です。プレイヤーは、いかに政治的バランスを取ることが難しく、現実でもよく聞く「だったらあなたが大統領になればいいじゃない」というセリフが、いかに無責任かを体感することになります。

現実の社会でも、大統領・国会・司法機関などが存在し、国家の資源や状況に応じて法案の発議や施行が行われています。その中で当然、利害の対立も生じます。たとえ法案がいかに合理的であっても、必ず誰かの損益に関わるからです。たとえば「すべての貧困層が裕福になるまで」という理想的なスローガンのもと、大規模な福祉政策が導入されたとしましょう。一見素晴らしい政策に思えますが、その予算が過剰であれば国家財政は破綻し、他の社会基盤や国防にまで影響が及ぶかもしれません。その財源を確保するために、富裕層や大企業に対する課税を強化すれば、当然ながらその側からの強い反発も生じます。プレイヤーとしては、多数派である貧困層を優先するほうが政治的なリスクは低く、つい富裕層の声を無視してしまいがちですが、もし過度な負担をかければ、企業は成長を諦め、富裕層は国外へ流出し、結果的に他国へ人材を奪われてしまうかもしれません。

現実では、富裕層が政治家にロビー活動を仕掛けたり、それでもダメならあらゆる手段を使って自己利益を守ろうとするのが常です。
こうした点を見ても、現実の政治はこのゲーム以上に複雑で、時に暴力すら伴うこともあるため、決して軽く考えてはいけないテーマだとあらためて思い知らされます。
今回の『フロストパンク2』の新システムである「委員会(コミッティ)」について、ひとつ惜しいと感じたのは、「汚職」や「賄賂」といった要素があまり描かれていなかったことです。良く言えば「ロビー活動」かもしれませんが、たとえばある派閥が好まない法案を採用する代わりに、別の派閥へ資金援助をしたり、支持層を引き込んだり、別の法案を通すことを約束するなどの取引的な要素が、今後の展開で追加されても面白いのではないかと思いました。
もしこのゲームが実験的に、ある派閥から「C法案を通してくれたら、あなたの口座に100万円振り込みます」というメッセージが届いたら——
……みなさんなら、どうしますか?

ゲームのキャラクターたちは、いわば「シミュラークル(模倣物)」の存在です。ゲームオーバーになってもセーブ/ロードで何度でもやり直せますし、彼らが実際に私たちの家の玄関を壊して押し入ってくるわけでもありません。
そう考えると、「100万円振り込むからこの法案通してくれ」と言われたら、「じゃあ喜んで!」とばかりに従ってしまうのではないでしょうか。たとえその法案が、他の派閥や一般市民を完全に無視した、特定の派閥だけのための内容だったとしても。 実際、現実の世界でもよく似たことが起きています。「どうせ任期が終われば自分は辞めるだけだし、自分には資産も警護もある。あんな連中に何ができる?」という安易な思考で、権力を持つ者たちが腐敗しやすくなっていく構図は、人類の歴史上、数え切れないほど繰り返されてきました。
もしこのゲームの中で、プレイヤーに対して直接的な賄賂やロビー活動が行われるようなイベントが追加されたら、果たしてどんな選択をしてしまうのか……とても気になるところです。
やはり、政治というものは本当に難しいですね。
私たちのような一般市民は、ニュースを見ながら日々政治家たちに苛立ちを感じ、「なんでこんな奴らが偉そうにしてるんだ」と思うこともあります。実際に批判されるべき政治家も少なくありません。
ですが、「だったらお前がやれよ!」というような発言が、いかに非現実的かというのも、こうしたゲームを通じて実感させられます。もし本当に“誰か一人のトップ”がすべてを決めてしまうような社会を目指すのであれば、それはもう“独裁”しかありません。そしてその独裁は、運良く「ダビデ王」のような賢君が現れればいいですが(女性問題はさておき…)、場合によっては「チャウシェスク」や「ヒトラー」のような人類の災厄となる存在が現れてしまう可能性もあります。 「だったらお前がやれ!」ではなく、「だったら投票しよう」が、現代社会に生きる私たち市民の正しい姿勢ではないでしょうか。

未来をより良く、今日をよりましにするために。それこそが、私たちの“必殺技”なのかもしれません。仮に将来『フロストパンク3(仮)』が登場するとしたら——今作が古代ギリシャや共和政ローマから帝政ローマへと変化する流れを描いていたことを踏まえ、次はその後の歴史をなぞる展開になるのではと想像してしまいます。例えば、今作で占領した植民地や、派閥追放ルートで分岐した追放者たちが別の国家を形成し、舞台となるイギリス以外に、フランスやドイツといった他の生存者集団が資源を求めて軍を編成し、海を越えて侵略してくる…あるいは逆に、主人公たちの都市が海を渡って他地域を侵略する「ワールドウォー」や「インベイジョン」などの副題がつく未来もあるかもしれません。
特に今回は「石油」が登場したため、軍事・外交・経済などの要素がより一層濃くなりそうな気もします。
もしプレイヤーが宗教ルートを選んでいれば「十字軍戦争」、独裁ルートであれば「世界大戦」、そして平和的ルートならば最も見るのが難しい「世界連盟エンド」など、多彩なシナリオが考えられそうです。そもそも、今作の主人公は物語終盤で内乱を鎮圧するために軍隊を編成しなければならず、エンディングの言葉からしても続編を意識したような含みがありました。さらに、今後は「生存」よりも「民衆を軍隊に組み込んでいく過程での葛藤」が主題となり、「報道メディア」の登場にも期待してしまいます。そのメディアを自分に都合よく利用して国民の支持を高める(まるでレニ・リーフェンシュタールのように“プロパガンダ映像”を作って支持率を上げつつ民衆を兵士に…)あるいはメディアに翻弄されてゲームオーバーになるシナリオも考えられるかもしれません。本作の評価次第では、『フロストパンク』が三部作として完成する未来も——そんな希望を少しだけ膨らませてみたくなりました。
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