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[Pluto] -人間ではないからこそ通じる強力なクリシェ-日本語訳/アニメーションコンテンツ 2024. 9. 18. 03:34
*この投稿には作品のネタバレが含まれています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。
https://www.youtube.com/watch?v=KHSt5U0l3Wc&ab_channel=NetflixJapan
Netflixのアニメの中で、久々に大作が登場しました。私たちにとって『鉄腕アトム』で有名なアトムのエピソード、「地上最大のロボット」を、『20世紀少年』や『MONSTER』でおなじみの浦沢直樹の漫画を基にしたアニメです。韓国では「起きろ、稼がなきゃ...」や「下半身鍛えなきゃ...」というミーム(meme)でも有名です。
韓国でこの場面を中心としたミームが有名です。 この作品はスモーキーなジャズ風のBGMにのせて、主人公はアトムではなく、超高性能AIを搭載した人型ロボット刑事「ゲジヒト」がメインとなり、推理もののように進行します。第1話では推理が進む中、突然「ノース2号と彼を雇った引退した音楽監督」の話が飛び出し、やや唐突に感じるかもしれません。しかし、この短いエピソードを見ているうちに、いつの間にかゲジヒトのことを忘れ、「ノース2号!」と涙を流している自分に気づくかもしれません。
正直、見ている間ずっと『このキャラ、なんかすごいどんでん返しをしそうだな(笑)』と思っていたら、実際には「反戦主義」だったのが意外な反転でした。 なぜなら、この作品は終始、主要キャラクターたちが私たちがよく知っている「クリシェ」のビルドアップを積み上げ、後半ではそのクリシェに沿った形でストーリーが展開していくからです。「クリシェ」という言葉自体、ストーリーや演出が他の作品で繰り返されるパターンを指すため、最近ではクリシェに飽きた視聴者がそのクリシェを覆す演出を好む傾向にあります。代表的なクリシェとして、悪役に強力な一撃を食らわせ、主人公側のキャラクターが「やったか?!(
ザオラル)」と叫ぶと、その悪役が生き返ったり、逃げ出したり、さらにパワーアップして第2ラウンドが始まる展開があります。このため、最近では「やっ...」と言いかけるキャラクターを封じる演出が、ちょっとしたギャグとして使われたりします。このキャラがぽっちゃりしているのは、クリシェが詰まっているからでしょう(多分)。 こういったクリシェのほかにも、新たに得た家族のために自分より強い敵と戦い、自らを犠牲にするクリシェ、死の間際にすべてを悟ったかのように周りに少し迷惑をかけつつも「帰ってきたら全部話すよ」と言い残して壮絶な最期を迎えるクリシェ、または「こいつは俺の子じゃない」と言い、自分が作ったロボットが傷ついても無関心でいながら、最後には修理してあげるクリシェなどが挙げられます。主人公が完全に死にそうな場面で、かつて敵だったキャラクターが主人公を助け、自らを犠牲にする展開もあります。本当に数えきれないほどのクリシェが詰まっています。 最近の一般的な作品では、こうしたクリシェだらけの映画やドラマを適当に作ってしまうと、観客の興味が「冷めてしまう」ことがあります。代表的な例としては、韓国映画のメロドラマ的な演出が挙げられ、皆さんも一度は聞いたことがあるでしょう。
韓国のクリシェ界の無形文化財1号「進行させろ」おっさん もちろん、ディズニーの『リメンバー・ミー』のような作品は、クリシェに挑戦していますが、ストーリーのビルドアップに加えて、作中の楽しい雰囲気が感情の「ルーティン」として観客を巻き込み、最終的にはそのビルドアップを爆発させて、使い古されたクリシェにもかかわらず、観客が涙を流す展開に導いています。
うわ、どこかで見たような(-_-)クリシェなんか持ってきやがって…(T_T) さて、話を戻しましょう。『Pluto』は『リメンバー・ミー』式のクリシェ演出だったのでしょうか?確かに似たタイプのクリシェが使われているかもしれませんが、手法は異なります。簡単に例えるなら、同じ剣でも韓国の剣術と日本の剣術は異なるように、『Pluto』は他の作品のクリシェに独自の「スパイス」を加えています。そのスパイスとは、クリシェの対象となるキャラクターが「人間よりも人間らしいロボット」であるという点です。
このようなキャラクターが多数登場します。 『Pluto』に登場する主要キャラクターはほとんどがロボットです。アンドロイドと呼んでも良いかもしれませんが、作中では「ロボット」という呼称が使われています。その形状もさまざまです。ゲジヒトの場合、自分で言わなければロボットであることに気づかないほど完璧に人間に似ている存在です。原作『鉄腕アトム』でのデザインとは一線を画しています。また、「自分はロボットです」と明示しているようなデザインのノース2号やモンブランもいます。しかし、彼らは皆、人間以上に人間らしく振る舞い、感情豊かで涙を流し、怒りも感じます。ただし、食事をするふりをしたり、必要ないのに食べることで「自分はロボットですよ」と視聴者に思い出させるシーンがあります。
クリシェ満載のキャラが自分の戦闘ロボットに乗るシーンで、疑念が一気に払拭されます。 しかし、これらのキャラクターがただ単に「人間よりも人間らしい」という描写で終わるわけではなく、なぜ彼らが「人間らしく振る舞うのか?」という疑問がストーリーの中で徐々にビルドアップされていきます。本来、彼らはそのように設計されていないはずですが、プログラムに過ぎないのに、まるでバグを起こしたかのようにロボットの限界を超える、あるいはロボットが夢を見るなど、「人間らしくならなければならない理由」が徐々に解き明かされていきます。そしてそのビルドアップが高いレベルまで積み上がると、物語はクリシェという形でそのビルドアップを壊して終わります。
個人的に共に敬礼したかった場面;つД`) ここで、『Pluto』だからこそ通じるクリシェの原理を説明する根拠が得られます。あえて、最近の人々がわかりやすいクリシェを使って各キャラクターの物語を完結させる理由は、「ロボットにはロボットのクリシェがあるが、彼らをもはやロボットとして見ることができるのか?この段階ではただの人間ではないか?」という論理をあてはめ、人間になりたかったロボットたちに人間が経験するクリシェで終止符を打たせたのです。作中のロボットキャラクターたちは、そうしてロボットとして生まれながらも、最終的に人間として物語が終わるような演出を見せたのです。だからこそ、この作品に出てくるクリシェは「人々にとっては」陳腐でありきたりなものかもしれませんが、このキャラクターたちにとっては意味があるものだったのではないかと感じます。
美術大学入試に落ちて銃で自殺したある人物と似た名前を持つこの100%人間であるキャラは、逆にマクガフィンになるという奇妙な現象もあります。 少し長い余談になりますが、この作品『Pluto』で個人的に最も印象的だったキャラクターは「天馬博士」でした。アニメ版でまず注目したのは「眼鏡のレンズの色」で、どこかで中二病の神話となった少年のダメな父親がかけていた眼鏡にそっくりではないかと…その振る舞いも似ていて、「これはどう見てもオマージュだ!」と思いました。そうです、まさに『エヴァンゲリオン』の主人公の冷徹な父親「碇ゲンドウ」のオマージュに見えました。
クレヨンしんちゃんにも特別出演(?) 碇ゲンドウというキャラクター自体、時代が進むにつれ劇場版や公式コミック設定などでどんどん立体的になり、一貫性がない点があります。亡き妻を蘇らせることはできないから、全人類を自分も含めてオレンジジュースにでもすれば妻と一体になれるんじゃないか?といった心構えで、世界を滅亡寸前まで追いやった張本人なのに、実は妻をあまりにも愛していたがために、息子に嫉妬すら感じる…本当に一言では説明できない複雑なキャラクターです。そして、新劇場版などで息子とも激しい戦いを繰り広げ、和解ムードに流れていくのですが…それと同じように、『Pluto』の天馬博士も演技トーンや視線の処理が非常に碇ゲンドウと似ているのです。また、実の息子を亡くし、その息子を完全に模した超高性能AIロボット「アトム」。しかし、いくら外見が死んだ息子「トビオ」に似ていても、一種の「テセウスの船」状態でそれを認められず、サーカス団に売り飛ばしてしまう…本当に碇ゲンドウっぽい感じです。ところが、最終的にアトムが再び目覚めるかもしれないほどの重傷を負った場面で(あの伝説のシーン)、ツンデレのように自分の体を酷使してまでアトムを救い出し、それが結果的に地球を救う結末へとつながるのです。
1995年から2021年にかけて和解する親子。 『エヴァンゲリオン』でも、亡き妻をどうしても忘れられず、妻の遺伝子成分で作られたクローン「綾波レイ」まで作り出した碇ゲンドウ。しかし、すぐに彼もまた妻ではなく、妻に似た「テセウスの船」に過ぎないことに気付き、地球を滅亡させますが、『Pluto』の天馬博士はむしろ地球を滅亡させるような行為に責任を感じ、その償いを果たすように物語が進んでいきます。正直、碇ゲンドウからのオマージュ要素を感じつつ、天馬博士という独自性が与えられているのではないかという気がしています。これ以上はネタバレになるので、ここでは省略します。
このデザインなら誰が見ても狙っているのが分かるでしょう(笑) あ、これだけは言っておきます。いくらアトムを原作にしたアニメでも、残念ながら「お尻ミサイル」は出てきません…
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