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  • 「犯罪都市4」-ヴィランのキーワード-
    日本語訳/映画コンテンツ 2025. 2. 27. 22:25

    *本ポストの特性上、作品および前作のネタバレが含まれています。ネタバレを望まない方はご注意ください。

     

     現在の韓国映画界において、まるで国民食のように安定感があり、満足感を与える映画シリーズが登場しました。すでにシリーズ3作連続で1,000万人以上の観客を動員した『犯罪都市』シリーズです。俳優マ・ドンソクが映画の確固たるペルソナを確立し、シンプルかつ爽快なカタルシスを観客に提供するヒーロームービーとして絶賛されています。(もちろん、この映画がここまでの人気を獲得した背景には、スクリーン独占などの複合的な要因もありますが、本ポストでは作品の演出に焦点を当てます。)

     

    https://www.youtube.com/watch?v=n8mwLIy8prU

     

     

     今回の『犯罪都市4』は、まるで官(公権力)が主役の武侠映画のようでした。本来、武侠とは地方豪族や自警団、独立勢力といった小規模な組織が覇権を争う姿を描くことが一般的ですが、本作は韓国の文化に合った形で再構成された印象を受けます。韓国は朝鮮時代から中央集権体制を確立し、地方に至るまで公権力が強く行き届いた国家でした。隣国・日本が武士階級による封建制度を敷いていたのとは異なり、韓国は一貫して「朝廷」や「政府」が問題を解決する、あるいは解決してくれるという意識が強い傾向があります。

     

     

     主人公であるマ・ソクド刑事は、まるで正統派武術の達人のように「ボクシング」を用いて悪を討ちます。警察という身分上、自由に武器を使用することもできず、韓国の文化的背景からアメリカのように銃を乱射することもありません。したがって、まるで武侠の達人のように、鍛え上げた「武(武義)」をもって悪を制する姿を見せます。また、上層部が避けたがる事件や、他の部署へ引き継ごうとする事件を最後まで担当し、拉致組織に犠牲となった母子の復讐を果たす姿は、まさに正統派武侠ストーリーの展開そのものです。この特徴を二文字の漢字で表すなら、強さそのものを象徴する「武(武)」と、義に厚いマ・ソクド刑事とその仲間たちの「侠(侠)」がピッタリ当てはまるでしょう。当然ながら、正義の名の下に行われる行為なので、複雑なことを考えずに応援しやすいのも魅力です。

     

    私は1作目の「びんた拳」のシーンこそが名場面だと思いますが…

     

     

     このように、主人公にキーワードを設定すると、シリーズごとのヴィランにもそれぞれ特徴的なキーワードがあることが分かります。すべてのヴィランに共通する「悪(悪)」は省略するとして、まず1作目のヴィラン・チャン・チェン一味は「欲(欲)」と「恐(恐)」のキーワードを持っています。恐怖を武器に地域を支配し、貪欲に利権を求め、部下の恋人を横取りするなど、その欲望は尽きることがありません。しかし、その過度な恐怖支配はやがて反感を買い、欲に目がくらんだ結果、罠にはまり最終的には捕まる運命に。とはいえ、「欲」と「恐」という要素を俳優たちの見事な演技で巧みに表現し、シリーズの幕開けとして申し分のない作品となりました。

     

    デートの申し込みシーン

     

     2作目のヴィランであるカン・ヘサンには「純粋(純粋)」というキーワードが最適でしょう。彼の登場シーンから、シリーズ最高の名場面の一つ「お菓子を食べるシーン」では、彼が一般的な「大人」とは異なることが明確に描かれます。彼の行動は極めてサイコパス的で、純粋に自分がやりたいからやる、というスタンスを貫いています。お金は必要だが、契約や交渉などは一切考えず、金を受け取ろうが受け取らまいが躊躇なく人を殺すという「悪の純粋さ」を体現したキャラクターです。彼が唯一交渉を試みた相手がマ・ソクド刑事であり、「誰が5だ?」という彼の名ゼリフは、マ・ソクドの「純粋な正義」を象徴しているようにも感じられます。『ドラゴンボール』の魔人ブウ純粋悪モードを彷彿とさせるような存在感は、まさに「純粋」のカリスマ性を表現した好例でした。

     

    お菓子を一緒に食べようとナイフを貸すシーン

     

     相対的に印象が薄い3作目ですが、新たな試みが見られた作品でもあります。ダブルヴィラン体制を採用し、日本人俳優を主役級に起用するなど、スケールの大きな展開が特徴でした。これに伴い、マ・ソクド刑事も広域捜査隊へ異動し、行動範囲が拡大。ヴィランのキーワードとしては、内部の裏切り者を象徴する「内(内)」、そしてその名からして「力(力)」を想起させる日本の殺し屋リキの圧倒的な武力を表す「力(力)」が挙げられます。正義なき力は暴力でしかないという構図の中、正義の力がリキを制する流れは非常に巧妙な演出だったと思います。

     

    実際、リキが刀を置いて二重極点(※『るろうに剣心』実写版で演じた相楽左之助の技)を使っていたら、マ・ソクドも負けていたかもしれません。

     

     そして今回の『犯罪都市4』では、3作目と同じくダブルヴィラン(+αとして権社長)体制を維持しつつ、1作目のキーワードを再び取り入れています。そもそも本作には、1作目のオマージュ的なシーンが数多く登場し、当時の精神を忘れないという姿勢が随所に見られます。そのため、チャン代表が「欲(欲)」というキーワードを持ち、それが彼の自滅につながると同時に、ペク社長とともに「知(智)」のキーワードも共有しています。ITの天才として知識を駆使し、不正な金を稼ぐチャン代表と、特殊部隊の経験から磨かれた見事な戦術で警察を翻弄するペク社長は、シリーズ歴代ヴィランの中でも最も知能の高い部類に入るでしょう。 3作目の腐敗警官ジュ・ソンチョルも知性を持つキャラクターではありましたが、決定的な場面で詰めが甘く、感情的になりすぎて最後まで正体を隠しきれなかったという欠点がありました。それに対し、4作目のペク社長は、チャン代表のトロール行為によって警察に情報が漏れたにもかかわらず、ほんの一瞬のタイミングのズレがなかったら完全に逃亡できていたという、シリーズ最も成功に近かったヴィランでした。

     

    マ・ソクド刑事のモエモエ拳で敗北寸前のシーン

     

     このため、映画のキャスティングからも知的な要素が垣間見えます。まるで「マルチバースではないが、マルチバースのように錯覚させるキャスティング」でした。まず、映画『怒った牛(성난황소)』のマ・ドンソク、キム・ミンジェ、パク・ジファンの組み合わせと、ドラマ『カジノ』で主演を務めたニコ・アントニオとイ・ドンフィが加わり、『カジノ』の続編のような雰囲気を醸し出しました。さらに、Netflixでおなじみのクォン社長役のヒョン・ボンシクや、ドラマ『殺人者ㅇ난감』で警察チーム長としてソン・ソックと共演したイ・ジフン(※3作目にも登場していたのでNetflixキャスティングは偶然ではありますが)など、類似したジャンルのドラマや映画で活躍する俳優たちがアベンジャーズのように集結し、それぞれ似た性格のキャラクターに再構築されたため、まるで映画『シビル・ウォー』を観ているような錯覚に陥るほどでした。もちろん、『犯罪都市』シリーズはマーベル・ピクチャーズのように作品同士が直接つながっているわけではなく、それぞれ独立した映画ですが、こうして同じ俳優陣が集結すると、無意識のうちに各作品がリンクしているような錯覚を覚えるのは面白い体験でした。

     

    どう見ても『カジノ』で一儲けしてこっちの世界に参入したチョンパルにしか見えない…

     

     ただ、残念なのは、そろそろマ・ソクドと同等に戦える「No.2」の存在を本格的に補強する必要があることです。1・2作目の重要キャラだったチャン・イスを再登場させ、サイバー捜査チームの新メンバーを投入したものの、彼らはあくまで補助的な役割であり、マ・ソクドと共に現場に出動する後輩刑事たちは、メインヴィランとの戦闘でほとんど活躍の場を得られず、完全な脇役に留まってしまっています。『ONE PIECE』で例えるなら、麦わらの一味にルフィが一人、ナミが三人、ウソップが四人、ブルックが一人いるような状態です。映画『エクストリーム・ジョブ』は、各キャラクターが異なる武術スタイルを持ち、最終決戦のアクションシーンが非常に見応えがありましたが、『犯罪都市』ではマ・ドンソク以外のキャラクターがヴィランの引き立て役になってしまっている印象です。むしろ、ボクシングだけを駆使するマ・ドンソクを補佐する形で、グラップリング(組み技)専門の刑事や、三段棒を使った剣道アクションを披露する刑事を登場させ、マ・ソクド刑事と対立しながらも共闘する新キャラクターが出てくれば、シリーズに新たな味を加えることができるのではないでしょうか。

     

    ルフィとウソップたち…最低でもサンジ級の戦力が一人は必要…

     

     今後のシリーズ展開も期待される作品であり、新作で登場するヴィランのキーワードを色々と予想してみました。次回はカリスマ的なヴィランが登場し、「忠(忠)」というキーワードで組織を動かし、「真実の部屋」が通じない敵が出てくるのか、それとも法の枠を超え、状況証拠は山ほどあるのに物的証拠を残さない「弄(弄)」というキーワードを持つヴィランが登場し、捜査を困難にさせるのか…次回作の展開が楽しみです。

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